大阪地方裁判所 昭和58年(ワ)6960号 判決
一 原告らは、原告らが創作したという新ターバンは原告らの製品として昭和五五、六年頃までには兵庫県西脇市及びその近郊の織布業者及びその関係業者等の間に広く知られたものとなつていた旨主張する。
しかしながら、右主張事実を認めるに足りる証拠はない。
原告徳岡は、本人尋問において、新ターバンは別紙目録記載の特徴を有しその寸法・デザイン・配色等の点で新規性を有するため、それが原告らの商品であることは西脇市及びその近郊の織布業者等にはよく知られていた旨供述する。しかし、当審で取調べた西脇市及びその近くの織布業者及びその関係業者たる各証人(宮田省郎、高田敏則、徳岡稔弘)はいずれも、原告らが被告の製品を発見しこれについて異議をいうまでは、新ターバンそのものを全く知らないか少なくともそれが原告らの商品であることは知らなかつた旨供述している。のみならず、原告徳岡本人の供述によつても、原告らは新ターバンを昭和五三年一〇月から約四年間に合計約一四万六〇〇〇枚製造・輸出したものであるところ、西脇市及びその近郊におけるターバンの製造・輸出は終戦直後頃から少なくとも三軒の産元商社により年間二二、三万ダースが製造・輸出され、そのデザイン・配色等は多岐に及ぶこと、また右ターバンの製造は産元商社が輸出商社から見本によりデザイン・配色等を指定した発註を受けこれをそのまま織布業者に発註するのが常であるから、被告のような織布業者としては自らが日頃受註する産元商社以外の産元商社がどのようなターバンを製造させているかを知る機会は乏しいものといえることが認められる。したがつて、原告徳岡本人の前掲供述はたやすく措信し難い。
また、成立に争いのない甲第六号証によれば、原告らは新ターバンの意匠につき昭和五六年一二月九日に意匠登録出願をしたが、その意匠登録(〔編註〕六二五三一四号)がなされたのは昭和五九年二月一三日のことであることが認められるところ、証人田原昭司の証言により原本の存在及び成立を認める甲第三、第四号証及び同証人の証言によれば、原告らはこれより前新ターバンの意匠につき昭和五六年一一月財団法人日本繊維意匠センターに意匠審査保全登録を依頼しその頃右登録を得たことが認められるけれども、同証人の証言によれば、右保全登録の審査というのは、右財団法人の内部で当該審査依頼のあつた意匠が右財団法人に過去に登録された意匠及び公知意匠に牴触しないかどうかを審査するだけのものであり、また右保全登録がなされたということも外部には一切公開されないことが認められるから、右の新ターバンの意匠につき保全登録がなされたということは、なんら新ターバンの周知性を証するものとは解されない。
そうだとすれば、被告の製造したターバンが新ターバンと類似するものであるか否かを問うまでもなく、被告に不正競争行為があつたことを前提とする原告らの本訴請求は理由がない。
二 原告らは、次に原告らが前記のとおり新ターバンの意匠につき意匠登録出願をしていたのに、被告はターバンを製造するにあたつてそのターバンの意匠がすでに意匠登録されあるいは登録出願されているか否かを調査する義務を怠り、原告らの意匠登録を受ける権利を故意に侵害した旨主張する。
しかし、被告が原告ら主張の調査をせずにターバンを製造したからといつてそのことによつて原告らの意匠登録を受ける権利が妨げられることはないし、登録出願された意匠の内容は少なくとも意匠登録がされるまでは公開されないから、被告に原告らが新ターバンの意匠につき意匠登録出願をしているか否かを調査する義務があると解することもできない。
そうだとすれば、原告らの右主張はそれ自体理由がないから、右主張を前提として被告に不法行為があるとする原告らの本訴請求も理由がない。
三 よつて、原告らの本訴請求をいずれも棄却する。